日曜日に開催されたパリ〜ルーベ第114回大会は、スタートから90kmの地点で形成された逃げグループから生き残り、ボーネン、ファンマルケ、スタナード、ボアッソンハーゲンという強力なライバルたちをベロドロームのスプリントで制した、オリカ・グリーンエッジのマシュー・ヘイマンの優勝で幕を閉じた。
37歳のヘイマンは、過去15回のパリ〜ルーベに出場しており、これまでの最高位は2010年の8位。2月のセミクラシックで右上腕を骨折し、先週スペインのレースで戦列に復帰したばかりだった。

また、今回初の試みとして、スタートからゴールまでの全行程が生中継され、ニュートラルゾーンから始まる257.5kmの熱い攻防のすべてが世界中に届けられた。

2月

時は戻る。 2月27日、ベルギー、オーデナールデ郊外。本格的なクラシック・シーズンの前哨戦であるオムループ・ヘット・ニウスブラットで、空撮ヘリは、あるクラッシュの様子をとらえていた。ゴール前41.4km地点。ファンアーヴェルマート、サガン、ロウらの先頭グループを追うメイン集団後方で、何人かの選手がハーグフクの石畳に投げ出された。BMCレーシングのジルベールとクインジアートが倒れた数メートル先に、自力で立ち上がったものの、バイクに覆いかぶさるように体を二つに折り曲げた、長身の選手の姿があった。白地にグリーンとブルーのジャージ、オリカ・グリーンエッジの一人だ。彼は、コース脇の草地までバイクを押したが、そこで力尽きたようにぺたんと腰を下ろした。ボランティアのレーススタッフが駆け寄り、ひざまづいて話しかけるが、日陰になっていて彼の表情は見えない。右腕を気にしているような仕草だけは見て取れる。オリカ・グリーンエッジのチームカーを呼び止めるために、スタッフが立ち上がる。たった一人で草むらに残された彼は、力なく右腕を体に沿わせ、前方に視線を向けている。その目には何も映っていないように見えた。

この日のチームのプレスリリースには、クラシックチームのキャプテンであるマシュー・ヘイマンが右上腕部を骨折したこと、クラシックシーズンにおける彼の不在がどれだけの痛手であるかということ、そしておそらく4週間後には、屋外でのトレーニングを始められるだろう、ということが書かれている。

ヘイマン自身はこうコメントしている。 「今日起きたことは、レース、あるいは我々のスポーツからはどうしても切り離せない部分だ。それでも、なかなか簡単には受け入れがたい。クラシック・シーズンのために何ヶ月もトレーニングを続けてきたのに、それが一瞬で無駄になってしまうなんて。ただただ落胆しているとしか言えない」
「やっかいな骨折ではないようだから、早く治して、一日でも早くレースに復帰できるようにと願っている」

ドクターによれば彼のクラシックシーズンは終わりだったが、ヘイマン自身は、家族との時間さえ犠牲にして取り組んできた5ヶ月のトレーニングを無駄にするつもりはなかった。一日2回、自宅のガレージにこもり、ホームトレーナーのペダルをただただ踏み続けた。その道のりがどこに続いているかは知らずに。

4月10日 パリ〜ルーベ

ここ数年、思い出せる限りのパリ〜ルーベの朝がそうであるように、この日も、コンピエーニュの町は真っ白な朝もやに包まれていた。前夜の雨は上がり、朝日が昇るにつれ、空気が透き通ってくる。空の端に青空が顔を見せる。どろんこのルーは今年もお預けだ。雨のおかげで、時にもうもうと巻き上がる砂煙も控えめにはなるが、乾いた部分と濡れた部分が混在する路面は、この上なく手ごわい。ちょっとしたコースの取り間違えやハンドル捌きが、落車につながる。

10時50分、予定より10分遅れで、198人の選手たちが走り出した。

ニュートラルゾーンから、アタックに備えた攻防が始まった。できるだけ前へ前へと位置取りを進めるため、選手たちは大きく横に広がり、赤いディレクター・カーを取り囲む。レース・ディレクターであるクリスチャン・プリュドムがルーフトップから上体を出し、スピードを落とし、少し下がるように手で指示を送る。

スタートを示す白い旗が振り下ろされた瞬間から、アタックが始まった。誰かが加速しては、その後ろに何人かが細長く続く。集団からカウンターアタックが起きる。わずかなギャップをつけても、完全に振り切ることができず、また引き戻されていく。スタートから50kmで形成された、ステイン・デヴォルデル(トレック・セガフレード)、マッテオ・トレンティン(エティックス・クイックステップ)、マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)らを含む、総勢20人以上の大エスケープ集団は、ここに選手を送り込みそこなったアスタナ、ランプレ、ロットNL・ユンボの働きで、吸収された。この逃げ集団の生き残りだったエリア・ヴィヴィアーニ(チームスカイ)、アレクサンドル・ポルセフ(カチューシャ)、ボーイ・ファンポッペル(トレック・セガフレード)の3人も、スタートから67km地点まで先行し続けるが、やはり吸収されてしまった。

90kmに及ぶ攻防の末、ついにこの日の逃げが決まったのは、この日最初の石畳区間(27番)トロワヴィル〜アンシーの手前だった。集団前方からイェーレ ・ワライス(ロット・ソウダル)と、マウヌス・コー・ニールセン(オリカ・グリーンエッジ)が抜け出した動きに、ヤロスラフ・ポポヴィッチ(トレック・セガフレード)、マシュー・ヘイマン(オリカ・グリーンエッジ)シルヴァン・シャヴァネル(ディレクト・エネルジー)、イマノル・エルビーティ(モビスター)らが加わる。プロトンから最後に滑り込んだ何人かを加えた16人が、レース先頭に躍り出て、集団とのタイム差を20秒、30秒・・・と広げていく。メイン集団も、追走の手を緩め、21番の石畳区間(ケレネン〜メン)の入り口(レース残り120km)までで、その差は3分半程度まで広がった。

ここまでにも小規模の落車は発生していたが、レースの流れを変える大きな落車がこの石畳区間で発生する。区間の出口付近で起こった大規模落車が、メイン集団を2分したのだ。前方の集団には、トム・ボーネン、トニー・マルティンらのエティックス・クイックステップ勢、イアン・スタナードらのチームスカイ勢、セプ・ファンマルケらのロットNL・ユンボ勢が前方の集団に入ったのにひきかえ、ペーター・サガン(ティンコフ)、ファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)、アレクサンドル・クリストフ(カチューシャ)、ニキ・テルプストラ(エティックス・クイックステップ)、ズデネク・スティバル(チームスカイ)らが落車の混乱の後方に取り残された。

【この時点での状況】 逃げグループ(ヘイマン、ポポヴィッチら)←第1グループ(ボーネン、ファンマルケら)←第2グループ(サガン、カンチェラーラら)

元TT世界王者(2011〜2013)であり、ルーベは初出場ながら、昨ツールの石畳ステージを制しているトニー・マルティンが大きく加速し、第1グループを牽引しながら、次の石畳区間(メン〜モンショー=シュル=エカイヨン)に飛び込んでいく。続く、アヴルイ〜ワレー(19番目)の石畳区間でも、エティックス、ユンボ、ディメンションデータが力を合わせペースアップをはかり、サガン・グループとのタイム差は、みるみるうちにふくらんでいく。

今日最初の勝負どころと目されていた18番の石畳区間、トゥルエ・ダランベールにたどり着くころには、逃げグループとボーネン・グループのタイム差は2分弱に、ボーネングループとサガングループのタイム差は1分半になっていた。

鬱蒼とした森をまっすぐ突き抜けるアランベールは、パリ〜ルーベを代表する石畳区間のひとつ。石畳の難易度(悪路であればあるほど星が増える)は最高の5つ星で、選手たちは歯を食いしばり、ハンドルバーを強く握り、前でクラッシュが起きないことを祈りながら、荒れはてた路面を駆け抜けていく。
(今大会に登場する中ではほかに、モン=アン=ペヴェールとカルフール・ド・ラルブルがこの「5つ星」を獲得している)※ 5つ星の3石畳区間についてより詳しくは、パリ〜ルーベのプレビュー記事をどうぞご参照ください

それぞれの集団が、アランベールの森の奥へ、奥へと進んでいく。先頭集団、前方の集団(ボーネングループ)は事無く2.4kmの悪路を走り終えたが、サガングループの後方では、ミッチェル・ドッカー(オリカ・グリーンエッジ)が落車による怪我で鮮血をほとばしらせ、その落車のために足止めされた選手にモトが突っ込む、という二重事故が起こっていた。

アランベールを抜け、次の17番に向かう第1グループ(逃げグループの次の集団)から、ボーネン、マルティン、スタナード、ボアッソンハーゲン、ロバート・ワグナー(ロットNL・ユンボ)が抜け出すが、16番の石畳の手前でファンマルケ、ルーク・ロウ(チームスカイ)ハインリッヒ・ハウッスラー(IAMサイクリング)らに追いつかれ、16人のグループを形成。エティックス・クイックステップ、チームスカイ、ロットNL・ユンボが中心となって高いペースを保ち、13番の石畳区間の出口(レース残り64km)で、次第に数を減らしていた逃げグループ(90km地点から逃げ続けていた)を追いつめ、吸収した。

元の逃げグループと、ボーネン、ファンマルケらのグループが合流して生まれた新しい先頭グループと、落車による分断以降、後方を走行し続けるサガン、カンチェッラーラらのグループとのタイム差は、12番の石畳区間、オルシに入る時点で、50秒だった。しかし、この3つ星の石畳で、怪獣、いやスパルタカス(カンチェッラーラ)と元怪童(サガン)という、2人のフランドル覇者の脚が炸裂。50秒のタイム差が、みるみるうちに30秒台前半へと縮まっていく。

この状況を知ってか、これまでマルティンが中心となっていた先頭グループの牽引を、チームスカイの4人がとって代わる ― が、11番の石畳区間(オシー=レ=オルシ〜ベルセ)出口の水たまり(泥)でジャンニ・モズコン(チームスカイ)が転倒。真後ろのロウも避けきれず、横倒しになった。チームスカイの不運はさらに続く。数キロ先では、同じように水たまり(泥)でサルヴァトーレ・プッチォも転倒し、荒れた石畳と舗装路の切り替えだけでなく、ドライ・ウェット・ドライ・ウェットとめまぐるしく変化する路面の難しさをあらわにした。

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