J SPORTSで放送しているITTFワールドツアーの前半戦は、急成長を遂げた伊藤美誠の活躍をはじめ、各大会で日本人選手の活躍が目立ち、卓球日本に対するリオ五輪への期待が高まる一方だったが…。
五輪のメダルを占う上で重要な大会となった先日のコリアオープン(7月6日からJ SPORTSで男女シングルス・ダブルス準決勝・決勝を録画放送)を含め、今シーズンのワールドツアーの戦いから、各選手の課題も見えてきた。リオ開幕まで残り1ヶ月、日本はどうなる?!

安定感に速さを加えたエース水谷
2番手・丹羽の復調が待たれる

リオデジャネイロ五輪・卓球競技は、いよいよ8月6日の開幕が目前に迫ってきた。日本チームが五輪前に出場する国際大会は、6月22〜26日に行われたITTFワールドツアー・コリアオープンですべて終了した。

2015年9月、リオ五輪のシングルスおよび団体代表候補が決まってから、日本チームは代表候補選手の世界ランキングポイントの管理に細心の注意を払ってきた。メダル獲得のための第一目標は、シングルスで第4シード以上、団体戦では第2シード以上を確保すること。それはすなわち、シングルスで準決勝まで、団体戦では決勝まで、圧倒的な強さを誇る中国勢と対戦しないことを意味する。

日本男子チームのエース水谷隼は、中国の馬龍と張継科、ドイツのオフチャロフに次ぐ第4シードの座を確保するため、5月末のクロアチアオープンを皮切りにスロベニアオープン、オーストラリアオープン、そしてジャパンオープンと「競技人生で初めて」と語るワールドツアー4連戦。クロアチアとスロベニアの2大会で優勝を果たし、荘智淵(チャイニーズタイペイ)とのデッドヒートを制して第4シードを死守した。ジャパンオープンでは世界ランキング1位の馬龍に敗れたものの、より速く厳しく、リスクを負った攻めで世界王者を脅かした。

前回のロンドン五輪では、ベスト8決定戦でメイス(デンマーク)に完敗し、ベスト16に終わった水谷。しかし、近年は台に近い位置でのより速く厳しい攻めを身につけ、格下に対する取りこぼしは非常に少ない。準々決勝までは高い確率で勝ち上がるだろう。卓球台などプレー環境にこだわる水谷にとって、リオ五輪では全日本などでやり慣れた、日本の三英製の卓球台でプレーできることもひとつのアドバンテージになる。

一方、五輪を前に不安を残したのがもうひとりのシングルス代表・丹羽孝希と団体代表の吉村真晴。丹羽は国際大会への出場を控えて長期のナショナルチーム合宿に参加し、万全を期して臨んだジャパンオープンでツボイ(ブラジル)、コリアオープンでマツモト(ブラジル)とブラジルの日系選手に連敗。相手の反応の壁を突き破り、戦意を喪失させるような両ハンド速攻の切れ味が影を潜めた。日本男子の倉嶋洋介監督は「1回戦負けが続いても、彼の場合それほど嫌な感じはない。それでパッと中国選手に勝ったりするし、いざという場面ではしっかりやってくれると信じている」と語っているが、特に団体戦では丹羽の復調なくしてメダル獲得はあり得ない。大会本番までにどこまで調整できるか。

団体メンバーの吉村は、コリアオープンを右肩の違和感で棄権。昨年後半に故障に苦しめられた右肩は、ほぼ100%の状態と自ら語っていたが、一抹の不安を残した。ただ、体力トレーニングを十分に積んで身体能力はさらに高まり、ジャパンオープンでも「フィジカル面ではしっかり動けているし、合宿でのトレーニングの成果が出ている」とコメント。団体戦のみの出場で、体力面の負担が抑えられることはプラスに働くだろう。

日本女子を囲む「帰化選手包囲網」
福原の単複でのプレーが、浮沈のカギを握る

中国女子のトップクラスが出場した6月のジャパンオープンとコリアオープンは、日本女子にとって「対中国」の貴重なデータ収集の場となるはずだった。
しかし、石川佳純、福原愛、伊藤美誠という五輪代表メンバーのうち、この2大会で中国選手と対戦したのは、ジャパンオープンで世界選手権女王の丁寧と戦った伊藤のみ。特にコリアオープンでは、1回戦で石川がリー・ジエ(オランダ)、福原がユ・フ(ポルトガル)、伊藤がリュウ・ジャ(オーストリア)といずれも中国からの帰化選手に敗れた。ただ、団体の第2シード、石川の第4シード以上と福原の第8シード以上は何とか確保できる見通しだ。

伊藤美誠

伊藤美誠

石川は3月の世界選手権団体戦で、リ・ミョンスン(北朝鮮)を相手に力強いカット打ちを見せていただけに、コリアオープンでカットのリー・ジエに完敗したのは意外だった。しかし、ここは「五輪前に当たっておいて良かった」と前向きにとらえたい。「ロンドン五輪前はそこまで考えられなかったけど、今大会は五輪の上のラウンドで当たりそうな選手、15人くらいに絞って対策練習をしていく」と語る石川。これまでやってきたカット打ちの練習だけでなく、個別の選手に絞った対策練習で最後の仕上げをする構えだ。前回銅メダル決定戦で馮天薇(シンガポール)に敗れ、逃したシングルスのメダルを獲得し、団体戦に臨みたい。

一方、「練習をやり込んで、練習量を自信に変えていくタイプ」と村上恭和監督が評する福原は、4月から咳ぜんそくなどの症状が出て、十分な練習量を確保できなかった。最も状態の良い時に比べると、前陣での切り替えとフットワークのスピードが落ちており、自信を持ってプレーできないことで、強引な強打などでペースを崩す場面もある。体調を回復させつつ調子を上げていくという、難しい舵取りを迫られるが、村上監督は「もう五輪は4大会目だし、調整の仕方はよくわかっている」と信頼を寄せる。4回目の五輪、まさに集大成となる大会だ。

7月1〜4日、その福原の生まれ故郷である仙台市で、福原とNT合宿を行ったのが団体メンバーの伊藤美誠。石川の2点起用、そして福原と伊藤のダブルスというのが日本女子の「勝負オーダー」になるだろう。
この仙台合宿のメインテーマは、ずばりダブルス。単純なダブルス練習ではなく、団体戦のライバルチームである北朝鮮とドイツのダブルスを想定した対策練習を徹底的に積んだ。カットマンのペアがいる北朝鮮に備え、中国の男子のカット選手を2名呼び、仮想ドイツペアにも実業団・男子のトップ選手を招集している。

ジャパンオープンで、4月の五輪アジア大陸予選で破った丁寧にリベンジを喫するも、1ゲームを奪った伊藤。試合後の会見で「勝っても負けてもおかしくなかった、丁寧とは結構どっこいどっこいになってきたんじゃないかなと思う」と強気なコメント。中国でも話題を集めたが、「鉄の心臓」とも言うべきメンタルの強さを、初出場の五輪の舞台でも発揮できるか。フォアの強烈なスマッシュとバック表ソフトの多彩な変化を組み合わせた個性的なプレーは、なかなか対策の的を絞りにくい。今、外国選手が最も恐れているのは、実は伊藤なのかもしれない。

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月刊『卓球王国』編集部
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