それはニュースではなかった。「やっぱり」の一言でよい。やっぱり勝った。優勝ではないが目標の銅メダルを引き寄せた。シンクロナイズドスイミングの井村雅代HC(ヘッドコーチ)は「理屈の外の理屈」でデュエットでもチームでも好敵手のウクライナを破った。この人ならラグビーを教えても成果を挙げるだろう。シンクロを究めながら、なおシンクロではなく勝負という競技に没頭しているのだから。

理屈を超えたところの理屈が勝負を支える。「世界一を争うというのは目に見えない部分の競り合いです。オーラはビデオには映りません。だから、ビデオばっかり見て研究しても意味がないの」(井村雅代著『教える力』新潮社)。いつか同じような言葉をあの人からも聞いた。

リオデジャネイロ五輪開幕前の7月31日、早稲田大学の大隈講堂で「大西鐵之祐先生 生誕100年」シンポジウムが、最後の教え子たちといってよい早稲田大学高等学院ラグビー部ОB有志の尽力により行われた。そこでは理屈の外の理屈が大いに語られた。ラグビーの元日本代表監督である大西鐵之祐(敬称略。以下同)とは、つまり井村雅代でもある。ただラグビーだけではなく、勝負という競技を熟知していた。

生前の大西鐵之祐がこう言うのを筆者は聞いた。「ビデオができてからコーチの能力は落ちた。あとで確かめればよいという気持ちで試合を見るからだ」。自分の手がけたチームの試合にせよ、対戦相手の研究にせよ、現場で緊張しながら凝視することでわかる妖気のようなものを含んでラグビーなのである。

先のシンポジウムでは、ハイデッガー哲学の研究者で、早稲田学院ラグビー部元部長にして同校の院長も務めた大西鐵之祐の理解者、伴一憲の講演が聴衆を感動させた。

「わたくしは84年生きてまいりましたけれど、たったひとつだけよいことをしました。それは大西哲学、闘争の倫理を世に出す手助けをしたことです」

その大西哲学、大西イズムについてはこう定義している。

「衝動的行動に科学的知性を注入することによって知性的行動へ高め、知性的行動に宗教的境地を注入することによって全人的な人格的行動へと高めていく哲学であります」

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