星をエムブレム周辺、あるいはエンブレムの中に配するのは常套手段の一つであり、大概の場合、それはタイトルを意味する。多くは代表チームのエンブレムで見られるデザインであり、俗な言い方をしてしまうと、要は「どーだ、すごいだろう、羨ましいだろう」ということなのだが、クラブチームにもこの手法でエンブレムに箔をつけることはある。今季から2部に戦いの場を移したアストンヴィラもその一つで、ヴィラのエンブレムで気勢を上げるライオンさんの腕のそばにある星はヨーロピアンカップ優勝を意味している。

しかし、中には特に星を並べるべき実績を持ち合わせていないにもかかわらず、ある種の虚飾として星をエンブレムに配するクラブもある。昨季までのマンチェスター・シティのエンブレムがそれで、1997年から昨季にかけて使用されたシティのエンブレムの上部に燦然と輝いていた、やけにメタリックな3つの星は、特に何の意味も持っていなかったのである。そんなマン・シティも、実績が伴うようになり、ペップもやって来て体制万全、欧州トップの座が狙えるようになり、もうエンブレムに下駄を履かせておく必要もなかろうということで、ご存知の通り、今季よりエンブレムのデザインを丸形に変更し、虚飾の星を取り外した。

デザインの変わったマン・シティのエンブレム

デザインの変わったマン・シティのエンブレム

というわけで、デザインの変わったマン・シティのエンブレムをつぶさに観察してみることとしよう。まずは、何をさておき、丸い。今季流行の丸である。それにしても、胸につけられたエンブレムが円形になるだけで、ユニフォーム全体の印象がこうも変わるのか、と、エンブレムの及ぼす影響の大きさに改めて驚くばかりである。ただ、この円形エンブレムは決して、単に時流に乗ったわけではなく、元々マン・シティが1970年代に使用し始めたエンブレムの復刻版とも言うべきデザインなのである。1971年に初めて丸いエンブレムがマン・シティの水色のユニフォームに縫い付けられた時、盾の中のデザインは帆船とその下の斜めの三本線だけだった。帆船はかつて貿易として栄えたマンチェスターの象徴であり、三本線は地域を流れる三本の川を意味する。翌年、帆船の下にはお役御免となった三本線の代わりに赤い薔薇の紋章が入り、エンブレムは幾分、華やいだ感じのデザインになった。この薔薇はランカシャーの州花を象った紋章である。

今季の復刻版を見てみると、帆船、三本線、そして赤い薔薇の全てが盾の中にいっぺんに盛り込まれた、幕の内弁当的にデラックスなデザインになっていることに気がつく。三本線にするか薔薇にするか、迷っているくらいだったら、いっそのこと両方いっちまえ、という、ピザのハーフ・アンド・ハーフみたいな解決法なのだろうけれど、こうなると、何故70年代の担当者たちがこの着想に至らなかったのか、不思議な気がする。

今回のデザイン変更で一番の恩恵を受けたのは、確実に存在感が増した帆船で、これまでメタリックな星と鷲という硬質な虚飾の中で、なんだか居心地悪そうにしていた帆船も、この丸いエンブレムの中では、順風を受け、さも気持ち良さそうにしている。

photo

平床 大輔
1976年生まれ。東京都出身。雑文家。1990年代の多くを「サッカー不毛の地」アメリカで過ごすも、1994年のアメリカW杯でサッカーと邂逅。以降、徹頭徹尾、視聴者・観戦者の立場を貫いてきたが、2008年ペン(キーボード)をとる。現在はJ SPORTSにプレミアリーグ関連のコラムを寄稿。

お知らせ

16/17 イングランドプレミアリーグ

◆16/17 イングランド プレミアリーグ
強豪クラブがひしめく世界最高峰プレミアリーグの注目試合を毎節5試合放送!!
また「デイリーサッカーニュース Foot!」では、月曜日〜金曜日までサッカーファンに必見の情報をお届け!
詳しくはこちら »

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ