アクシデントをチームが襲ったのはその頃だ。シーズン終盤からレギュラーに抜擢されていた1年生の檀崎竜孔がチャンピオンシップで負傷し、選手権でのフル稼働が難しくなった。黒田監督が主力選手を集めてミーティングを開いた時、彼らがスタメン出場を一番に訴えたのが住川だったという。「その時に(住永)翔や壱晟とかチームの主力が自分を推してくれて、そこでチャンスを掴めたんです」と本人は振り返ったが、おそらくは住永や高橋も「人が見ていない所でどれだけできるか」というテーマに突き動かされた同級生の努力をしっかり認めていたのだろう。「自分を監督に推してくれた4人には本当に感謝しています」と口にした住川は1月2日、選手権初戦となった鵬翔戦のスタメンに名を連ねる。

1点を先制した23分。中央で相手を引き付けた住川は完璧なラストパスを送り、鳴海彰人のゴールをアシストすると、68分にもFKを郷家友太の頭にピタリと合わせ、ダメ押しの5点目を演出してみせる。どちらも振るったのは自主練で磨き続けてきた得意の左足。「『自分がやらなきゃ』という気持ちはあって、1年生の代わりに入っているので、ソイツの分もやらないといけないですし、3年生ということで自覚と責任という部分をずっとずっと考えていました」という気持ちで臨んだ選手権デビュー戦で、フル出場を果たした上に見事2アシストの満点回答。以降も指揮官の信頼を獲得した住川はスタメンで起用され続ける。

1月9日。「22年間やってきてもなかなか手の届かなかった一番欲しいタイトル」と黒田監督も言い切る選手権での日本一に王手を懸けたファイナル。住川はキックオフの瞬間をピッチで迎える。「『楽しめ』って言われるんですけど、いきなりスタメンで『楽しめ』って言われても、そんなに簡単じゃないですよね(笑) でも、こうやって埼玉スタジアムで4万人も入ってくれて、こんな素晴らしい環境でできたら、硬くなりますけど楽しかったです」。82分まで走り続けた住川はベンチで日本一を告げるタイムアップのホイッスルを聞いた。「夢にも見ていなかったし、想像もしていなかった」スタメンを掴んでの悲願達成。「優勝した瞬間は『報われた』という感じですね。『ここに来て良かった』と思いました」という住川。苦労してきた3年間の最後の最後で巡ってきたラストチャンスを、自らの努力を信じることで決して離さなかった広島出身の18歳は、憧れていた“テレビの中でのプレー”を全国放送で実現させ、雪深い青森の地で苦楽を共にしてきた仲間たちと最高の歓喜に身を委ねた。

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土屋 雅史
Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、デイリーサッカーニュース Foot!を担当。

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